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環境教育プロジェクトについて
以下、「小島愛一郎副理事長(サン・アクト株式会社代表取締役)による環境教育プロジェクト報告書」からの抜粋です。

 基本的な考え
 都市の樹木は病んでいる・・・我々の主張と環境教育プロジェクトの位置付け

 小橋理事長がご指摘されているように、「日本の都市の緑、樹木は病んでいる」のが現状で、このことを多くの方々に認識してもらいたいという点が我々の活動の原動力だと考えている。また、この現実を一般の方々に知っていただくことの重要性を考えると、今をもって活動の必要性を痛感している。

 さて、私が「樹木が病んでいる」と言うよりも、私以上に深く都市の緑に関与されてきた片山副理事長をはじめとする他の理事の先生方や、今回、樹木活力度の調査でお世話になった大手先生、守村先生、中村先生のような専門家の方々が主張される方が極めて説得力があるため、私はNPO法人グリーン・エンバイロンメントの活動のもう一つの柱である「環境教育プロジェクト」について、ここで報告したい。

 いくら都市の緑が病んでいると我々が主張しても、樹木に関心を持つ意識が無ければ、前進しない。そこで、樹木が実際にどの程度、衰退しているかを客観的に数値として提示するための方法として、「樹木活力度計量測定システム開発プロジェクト」がある。

 そして、親子や地域住民などの参加型で、かつ身近な樹木をツールとして活用し、実際に緑に触れ親しんでもらうことで、樹木を見つめ直してもらうというものが「環境教育プロジェクト」の位置付けではないかと私は考えている。

 換言すれば、我々の主張と、研究開発、そして参加型・体験型環境教育が同時に動いていくことで、初めて我々の活動目的を達成することが可能になるということである。

 当NPOは、農学分野の専門家と環境教育の専門家が理事の中心となって構成されており、このことで2つのプロジェクトは実現できた。理事の一人である小西理事は、学生時代から野外活動・体験学習・環境教育といった分野で活躍されており、私も学生時代は、小西理事と同じ団体でキャンプリーダーとして子供達と野外活動を実践してきた。このように環境教育プロジェクトの推進は、小西理事の経験とノウハウによるところが多く、あらためてここに謝意を表したい。

 さて、環境教育プロジェクトを報告する前に、昨今の環境意識の高まりをふまえ、日本社会の変化について僭越ながら私なりの考えをまとめてみた。

 社会の変化
 新学習指導要領による教育現場の混乱

 平成14年度から新学習指導要領が開始された。完全週5日制や総合的学習を小学生の場合、3年生から週当たり3時間程度設定するなどが新しい内容となっている。

 他科目の学習で得た個々の知識を結び付け、総合的に働かせることを目標とした総合的学習は、従来の指導内容や指導目標が無いだけでなく、検定教科書も無い。現場の先生方にはかなりの負担となり、新しい科目の出現と他科目の削減は、教育現場に大きな混乱や負担をもたらすのではと懸念していた。

 残念ながら、これが現実となり、教育現場や行政の方々の懸命な努力にもかかわらず、新しい変化にはすぐには対応できず、新学習指導要領が求めたものはそう簡単には達成されなかったと私は思う。

 これは、文部科学省が新学習指導要領開始からわずか2年足らずの平成15年12月に総合的学習の充実化などを目的として、指導要領を一部改正したことにも現れている。当初は無かった総合的学習の指導内容、指導目標や全体計画を学校ごとに定めることなどが改正点である。

 このように、総合的学習については、行政や教育現場だけでなく、企業・NPOなど、国民全体で注力し、協力していかなければいけない段階に来ているのではないだろうか。その意味では、当NPOが少しでも一翼を担えるのではと思い、環境教育プロジェクトは推進されてきた。

 環境教育推進法の施行によって、教育現場だけでなく、国民・企業すべてが環境教育に参加

 「環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律」(以下、環境教育推進法)が平成15年10月に施行された。この法では、国や地方公共団体は環境保全活動・環境教育の施策を積極的に推進すること、企業は、社員教育の場で環境を学ぶだけでなく、NPOなどと連携し、企業市民として国民と共に積極的に環境保全活動や環境教育を推進することなどが制定されている。まさに、国民すべてが環境に関する活動に参加することを義務付けられた時代へ入ったと言える。

 上述したように、総合的学習、環境教育などを国民全体で支えることが法制化されたもので、国民の一人として、そしてNPOとしても積極的に協力する必要がある。私は、この法についての当NPOの役割は、企業と積極的に連携すること、そしてこれを教育現場が総合的学習や普通の授業で容易に受け入れられるものに変え、少しでも新しい事例としてお役に立てるものを実践していくことではないかと考えている。

 企業の社会貢献活動の高まり、日本経団連、そして1%クラブ

 私の手元に社団法人日本経団連がまとめた「2002年度 社会貢献活動実績調査結果」がある。調査対象は、日本経団連会員企業及び1%(ワンパーセント)クラブ法人会員(注)の合計1,302社(回答340社)である。

 調査結果を見ると厳しい経済情勢にもかかわらず、社会貢献活動支出総額は1,190億円で、一社平均3億7,600万円と2001年と比較して9.9%も増加している。さらに特筆すべきは、企業社員のボランティア活動支援を積極的に推し進めている企業の増加率だ。ボランティア休暇・休職制度や表彰制度を導入している企業が1993年度に35.3%に過ぎなかったものが、2002年度には60.9%と大きく増加している。また、NPOやNGOを「多様な市民の担い手」(複数回答 69.5%)、「社会貢献活動推進のパートナー(同 50.9%)として企業はとらえており、NPOに対する企業の期待は高まっている。

 この調査からも、我々は企業と共に歩み、共に活動していくことの重要性だけでなく、ボランティアとしての企業社員独自のノウハウを活用させていただくNPO運営など、考えるべき点が多い結果がうかがえる。

注:日本経団連が1990年11月に設立したもので、1%クラブとは経常利益や可処分所得の1%相当額以上を自主的に社会貢献活動に支出しようと努める企業や個人の会員組織である。

 先駆事例として
 環境教育プロジェクト・・・新学習指導要領・環境教育推進法に合致した枠組み

 このように、我々を取り巻く状況は、新学習指導要領や環境教育推進法、そして深刻な経済情勢にもかかわらずNPOをパートナーとしてとらえている企業の姿勢など大きく変化している。また、教育現場・企業、おそらくは行政もあまり経験やノウハウが無いであろう環境教育を何とか推進しなければならない時代が到来したとも言えなくはない。よって、様々なノウハウを持ったNPOが積極的に教育現場や企業と連携し、環境教育を協同で進めていくことを既に時代が要求していると私は思う。

 理科や社会、環境教育が同時に学べる横断型カリキュラムが総合的学習には求められている。そして、企業がNPOと連携し教育現場で環境保全活動や環境教育を積極的に実施することが環境教育推進法で求められている。我々のプロジェクトはこの2点を満たし、かつ環境教育推進法が施行される前である平成14年12月からある大手企業の支援を受け、既に開始していた。このように、NPO法人グリーン・エンバイロンメントの環境教育プロジェクトは、社会の変化に合致した枠組みを達成しているだけでなく、先駆事例としても位置付けることができると考えている。

 我々の活動を先駆事例として評価いただき、事例発表の場を与えていただいたUFJ総合研究所 地球環境室の牧研究員にここにあらためて謝意を表したい。

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