サクラのがんしゅ病はNectria
galligenaによる樹幹の病害とされているが、調査地域では樹幹よりも枝に形成されたがんしゅが多く、これに原因すると考えられる枝枯れも多い。病原菌は不明である。がんしゅの形成がそれより先端の枝の枯死を招き、葉量の低下から中枝から大枝全体の枯死にいたっている。
枝がんしゅ病は各調査区に1-2個体は見られるが、とくに7区に集中して発生している。7区の9個体はすべてソメイヨシノで、ランクBのほぼ良好な健全度であるが、そのうちの7個体に枝がんしゅが形成されていた。罹病個体は連続して生育しており、罹患部はいずれも疏水の上に張り出した枝にできている。このような枝がんしゅの発現状態は、罹患部から最も近い個体の枝へと感染するメカニズムを想起させる。罹病枝の枯死率は非常に高く、枝がんしゅ病の病原性が予想以上に強いことが示唆される。
枝がんしゅ病の罹病個体はヤマザクラ2個体を除きすべてがソメイヨシノで、てんぐ巣病と同様、ソメイヨシノの罹病感受性が高いものと推察される。このため、調査地域では近い将来、枝がんしゅ病が隣接区に感染していくことが懸念される。枝がんしゅ病の罹病枝は早急に切除して抗菌・防菌塗布剤による事後処置する必要があろう。
枝がんしゅ病が7区に集中発生している原因は不明であるが、あるいは地形や微気象が影響しているのかも知れない。とりわけこの区では、クヌギやコナラなどの高木に被圧された側の枝ではなく、山科疏水に張り出した枝に罹患部が集中的に罹病している。他の区でもおおむね同様な傾向があり、本菌による感染メカニズムを解明するうえで興味深い現象である。
(注)下記写真はすべて2004年7月23日に撮影したものです。 |