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山科疏水のサクラ並木における枝こぶ病(仮称)について
以下、「山中勝次理事(京都菌類研究所所長)による山科疏水のサクラ樹勢衰退調査報告」からの抜粋です。

 枝こぶ病についての所感
 サクラのがんしゅ病はNectria galligenaによる樹幹の病害とされているが、調査地域では樹幹よりも枝に形成されたがんしゅが多く、これに原因すると考えられる枝枯れも多い。病原菌は不明である。がんしゅの形成がそれより先端の枝の枯死を招き、葉量の低下から中枝から大枝全体の枯死にいたっている。

 枝がんしゅ病は各調査区に1-2個体は見られるが、とくに7区に集中して発生している。7区の9個体はすべてソメイヨシノで、ランクBのほぼ良好な健全度であるが、そのうちの7個体に枝がんしゅが形成されていた。罹病個体は連続して生育しており、罹患部はいずれも疏水の上に張り出した枝にできている。このような枝がんしゅの発現状態は、罹患部から最も近い個体の枝へと感染するメカニズムを想起させる。罹病枝の枯死率は非常に高く、枝がんしゅ病の病原性が予想以上に強いことが示唆される。

 枝がんしゅ病の罹病個体はヤマザクラ2個体を除きすべてがソメイヨシノで、てんぐ巣病と同様、ソメイヨシノの罹病感受性が高いものと推察される。このため、調査地域では近い将来、枝がんしゅ病が隣接区に感染していくことが懸念される。枝がんしゅ病の罹病枝は早急に切除して抗菌・防菌塗布剤による事後処置する必要があろう。

 枝がんしゅ病が7区に集中発生している原因は不明であるが、あるいは地形や微気象が影響しているのかも知れない。とりわけこの区では、クヌギやコナラなどの高木に被圧された側の枝ではなく、山科疏水に張り出した枝に罹患部が集中的に罹病している。他の区でもおおむね同様な傾向があり、本菌による感染メカニズムを解明するうえで興味深い現象である。

 (注)下記写真はすべて2004年7月23日に撮影したものです。

枝こぶ病  赤丸内が枝こぶ病罹病部位 枝こぶ病拡大  左写真赤丸内の拡大。
枝の一部がこぶ状になっている。
枝こぶ病  赤丸内が枝こぶ病罹病部位 枝こぶ病拡大  左写真赤丸内の拡大。
枝の一部がこぶ状になっている。

枝こぶ病罹病部位 枝こぶ病罹病部位 枝こぶ病罹病部位拡大
 赤丸内が枝こぶ病罹病部位  赤丸内を拡大したもの。先端の枝は枯死している。  赤丸内をさらに拡大したもの。がんしゅが形成され、先端の枝が枯死している。

枝こぶ病罹病部位 枝こぶ病罹病部位拡大 枝こぶ病罹病部位拡大
 赤丸内が枝こぶ病罹病部位  赤丸内を拡大したもの。先端の枝の葉が枯れ、枝が枯死しかけている。  赤丸内をさらに拡大したもの。がんしゅが形成され、周囲の枝は枯死している。

サクラ枝こぶ病罹病部位より先端の枝は、ほぼ枯死している場合が多いのが現状である。また罹病して日が浅い枝には葉がついているが、いずれ落葉し、枝全体が枯死していくと思われる。いずれにせよ、継続観測によって、どのように衰退するかの調査が必要である。

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