樹木保護について(全文掲載)
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はじめに |
■樹木保護の現状 現在の日本では、公園樹・街路樹を単に景観の一部や備品の一つとして認識されている場合もあり、「樹木保護」についての認識は欧米に比べあまり高いとはいえないのが現状です。 近年、環境問題が盛んに議論されていますが、植林や酸性雨被害といった事柄に終始し、「健全な樹木」に対する保護・保全の考え、あるいは身の回りに多く見られる「弱っている樹木・枯れかけている樹木」に対するケアについてはあまり重要視されていせん。 また、最近では「樹木医」・「樹医」といった専門家が樹木治療を行っていますが、多くの場合、古木や名木についての治療です。よって、何らかの処置が必要になる前に行うべき樹木の保護や、最も必要とされる一般樹に対する手入れ等までには手が回っていないといえるのではないでしょうか。 ■樹木保護の重要性 現在の日本では、樹木の病害虫を防ぐための処置や、特に健全な樹木に対する樹木保護の重要性についての認識は、まだあまり知られていないと考えられます。 しかし、現在のような状態が続くと、多くの樹木、特に一般樹が、酸性雨や各種病害虫の影響を受け、近い将来、大きな問題となる可能性はかなり高いといえます。そのためにも、今から樹木保護に関する作業活動及びその啓蒙運動を行うことは重要であると考えています。 |
樹木保護とは |
■樹木保護の定義 私たちが提唱する「樹木保護」とは、樹木の保全と樹勢の回復の2つから成立しています。
■樹木の保全:健全な樹木の状態を保持・保全する 健全な樹木も剪定や風害により切口や傷口が生じます。これらの傷口が外部からの病害虫の侵入口となる場合が多く、一度侵入すると何らかの影響を樹木に与え、最終的には樹勢が衰えはじめます。 さらに、長期間にわたり手入れがなされていない樹木の土壌は、樹木にとって極めて悪環境な状態となります。 よって、「樹木の保全とは、病害虫の侵入口となる樹木の切口や傷口の保護や、土壌をさらに改良し樹勢の向上を促すことによって、健全な状態を維持していくこと」をいいます。 剪定の後や傷口を見つけた時にはすぐに塗布資材を使用し、外部から樹木を保護することが重要です。また、各種資材を使用し、バランスの良い土壌に向上させていくことが必要となります。 ■樹勢の回復:樹勢の衰えた樹木を回復させる 樹木の樹勢の衰え(花付きが悪い・緑の葉が黄色くなっている等)の原因は、切口や傷口からの病害虫の侵入による腐朽、あるいは土壌がやせていること等が挙げられます。 この場合、腐朽部分や被害部分を完全に削り取り、防菌処理を行います。樹木にとっては、樹皮を剥がされたことと同じで削り取った部分を塗布資材で保護することがその際に不可欠となります。また、各種資材を使用した土壌改良作業を並行して行い、樹が本来望んでいる生態バランスに整え、樹勢回復を促します。 よって、「樹勢の回復とは、腐朽部分を削り取り、その箇所を外部から保護し再発を防ぐことや、悪化している土壌改良を並行して行い、樹勢の回復を促すこと」をいいます。 |
樹木保護作業について |
■基本的な考え 私たちが実際に行う樹木保護作業では、以下の基本的な考えに基づき、作業を行っています。
私たちが使用する資材は、すべて微生物や天然の植物抽出液など環境にできるだけ影響を与えないものです。樹木にとって異質な無機物(幹の空洞へのウレタン処理等)を使用することは、長期的には大きな影響を樹木に与えると考えるからです。 また、人通りの激しい公共の場での作業も多いことから、人間に害を与えない資材の使用が求められていることも理由に挙げられます。 次に、私たちは、樹木にとって栄養を与えることとが樹木の樹勢回復・向上をもたらす最大の要因であるとは考えません。樹木が望む最適な自然バランスを樹木自身が取り戻すことにより、長期にわたる樹勢維持・向上が達成できます。よって、この自然の生態バランスを取り戻す手助けが樹勢回復作業であると位置づけています。 このように、環境や樹木にとって悪い影響のない資材を使用し、樹木が望む最適の自然生態バランスを整えることが、私たちの樹木保護作業の基本的な考えです。 |
健全な樹木の保全 |
■基本的な考え 健全な樹木の樹勢を保持するためには前述したように、@切口・傷口の保護、A土壌の浄化・改良が主要な作業となります。 剪定後の切口や風害・雪害によって生じた傷口などは、見つけたらすぐに塗布資材を使用します。これは次の理由からです。
現在、数種類の塗布資材がありますが、私たちが独自に開発した樹木保護資材「樹木の味方」(じゅもくのみかた)を使用します。「樹木の味方」は農薬ではなく、環境に影響を与えないワサビの辛み成分(イソチオシアン酸アリル)が有効成分です。 また、今は健全な樹木も、土壌が悪化していくことで樹勢が衰弱していく可能性があります。これは、次のような原因が考えられます。
よって、日頃から土壌の状態を把握し、必要な作業を施すことが土壌状態の維持・向上につながり、樹勢は保持されていきます。 私たちは、土壌の浄化に嫌気性微生物系土壌改良資材を使用します。これは有効成分である嫌気性微生物群が、有機物を還元分解し、土壌中の微生物を増殖させます。また、分解の過程で様々なエネルギーが発生します。これらにより、土壌は浄化され、病害虫に強い最適な自然のバランスを保った土壌へ改善されていきます。 |
樹勢の回復 |
■樹勢回復のために 樹勢衰弱の原因は、前述したように、@切口・傷口への腐朽菌の侵入による幹や枝の腐朽、A土壌状態の悪化などがあります。また、排気ガスや日当たりが悪いなど樹木のおかれている周辺環境により、樹勢が衰退することもあります。 よって、私達は、樹勢が衰弱している原因を様々な角度から検討し、次のような作業を行います。
前述したように、腐朽部分は完全に切除し、ウレタン処理などは行わず、「樹木の味方」(じゅもくのみかた)を塗布しておきます。また、土壌の悪化が原因の場合、嫌気性微生物系土壌改良資材を使用、土壌に従来から存在する微生物の増殖により、土壌が望む自然生態バランスを整え、土壌の浄化・改良を行います。 樹勢衰弱の樹木の多くは、腐朽や土壌悪化だけでなく、様々な要因が重なっています。よって、それらが何かを的確に判断し、できるだけその障害を取り除くことが作業の重要なポイントとなります。例えば踏圧被害の場合は、根元周辺に柵を造ります。 また、排気ガスや日当たりが悪いなど、外部環境が原因の場合、できるだけこれらの影響が樹木に及ぼさないよう様々な手法をとります。 このように、樹勢衰弱の場合、目に見える被害を取り除く単純な作業だけでなく、樹木のおかれている環境を十分に配慮した総合的な作業・手法が必要で経験やノウハウが極めて重要となります。 今までの「樹木保全」と「樹木保護」をまとめると次のようになります。
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手法の特徴 |
■従来の手法との違い 私たちと従来の手法を以下のように比較することで、今まで述べてきたことに関して、さらに理解が深まると考えます。
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